
概要
世界の温室効果ガス排出量の約8%を占める鉄鋼産業では、脱炭素化に向けた重要な手段としてリサイクルによる資源循環が進められています。しかし、そもそも世界各国の鉄鋼産業はどの程度「循環型」なのでしょうか?本研究では、世界各国における鉄鋼材の生産・利用・廃棄の流れを調査し、鉄鋼材に含まれるリサイクル材の世界的な割合は、過去20年間にわたって30%程度で停滞していることを明らかにしました。この停滞は、リサイクル工程の非効率性によるものではなく、鉄鋼材の社会蓄積量が急増していることに起因しています。また、鉄鋼生産量上位30カ国では、製鋼時に利用されるリサイクル材の割合に5%〜96%という大きな幅があることが示されました(日本は31%で30カ国中22位)。ただし、これは必ずしも各国の資源循環に関する取り組みの優劣を示すものではありません。本研究では、一部の国で高いリサイクル材割合が見られる背景には、鉄鋼生産の海外委託やスクラップの輸入を通して、リサイクル材割合の低い国へ依存する構造があることを明らかにしました。鉄鋼材の社会蓄積量が世界的に増加する限り、特定の国の鉄鋼生産においてより多くのリサイクル材を利用することは、世界規模での資源循環推進に必ずしも直結するとは限りません。まずは、社会蓄積量の安定化を図ることが優先課題となります。あわせて、近年、国際的に議論が進む「リサイクル材含有率」の目標設定においては、各国の独自目標が鉄鋼生産の海外移転やスクラップの囲い込みを誘発することがないよう、科学的根拠に基づき、国際的整合性を確保した目標設定が求められます。
著者
Takuma Watari, Tomer Fishman, Hanspeter Wieland, and Dominik Wiedenhofer
掲載誌
Resources, Conservation and Recycling, 220, 1083637, Link