カーボンニュートラル社会への移行は日本の鉄鋼生産・利用をどのように変えるのか?

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概要

本研究では、カーボンニュートラル社会と整合的な日本の鉄鋼生産・利用像について数理モデルを用いて解析し、供給側と需要側において鍵となる対策を調査しました。その結果、2050年カーボンニュートラル社会における鉄鋼生産・利用可能量は、技術開発が計画通りに進展した場合でも、再エネ電力・水素・鉄スクラップの供給制約のために、現在の半分程度となる可能性が示唆されました。特に高級鋼材(薄板や高張力鋼など)を多く利用する自動車産業への影響が大きく、鉄スクラップを許容限界の高い建設材料(棒鋼や形鋼など)にダウンサイクルするという現在の慣習が今後も続いた場合、自動車産業が2050年に利用可能な鋼材は現在の約40%のレベルに留まると推計されました。上記の結果は、現在、中心的対策として議論されている特効薬的技術(水素直接還元製鉄など)に加えて、(1)鉄スクラップで高級鋼材を生産するアップサイクルの確立、(2)現状より少ない鋼材利用でサービス提供を可能とする新規ビジネスモデルへの転換、の2つを鉄鋼産業と需要側産業が協働的に進めることの重要性と喫緊性を示唆しています。2050年カーボンニュートラルの達成には、安価な素材を大量に利用する現代社会から、高機能な素材を効率的に利用する社会へ迅速に移行し、社会全体で資源制約に備えることが鍵となります。

著者

Takuma Watari, Sho Hata, Kenichi Nakajima, and Keisuke Nansai

掲載誌

Nature Sustainability, 2023, Link