博士課程早期修了に関する備忘録
はじめに
本ページは博士課程早期修了に関する自身の経験を、備忘録としてまとめたものです。これから早期修了を目指す方の何かの参考になれば幸いです。なお、情報は全て私の個人的な経験(東京大学・新領域・環境システム学専攻・2021年修了)に基づいています。他大学・他研究科・他専攻には当てはまらないことが大半だと思いますので、ご注意ください。
ポイント
- 早期修了のための最低基準は専攻の内規によって明確に決められていました。具体的には、ジャーナルへの掲載済み論文数とその質に関するものです。
- 通常の審査会とは別で早期修了のための特例措置審査会を開催し、そこで早期修了関連の評価を受ける必要がありました。
- 特例措置審査会を開催するにあたって、その妥当性を証明する書類を事前に提出し承認を得る必要がありました。
- 私の場合は、国際誌に掲載済みの論文数と質が基準を満たしていることに加えて、科研費を獲得していること(スタート支援と基盤Cを持っていました)、在学期間中に研究所のテニュアトラック型研究員に採用されたことをアピールする文章を作成しましたが、それにどれほど意味があったのかはわかりません。
- 特例措置審査委員には7名、博士論文審査委員には6名の先生方にご協力を頂きました。早期修了を申請するにあたって、通常よりも多くの先生方に審査委員に加わっていただくことになりました。
- 早期修了に当たっては、指導教員や教務担当の先生方に諸々の調整を含めてかなりの負担が生じているようでした。ですので、早期修了の可否はかなりの部分で指導教員を含む先生方の協力度合いに依存するのだと思います。以上を踏まえて、早期修了を希望する場合はかなり前もって指導教員に相談しておいた方が良いと思います。
- 私はスケジュールを正確に把握しておらず、特例措置審査会前の博士論文のまとめに2週間しか時間をとれないという致命的なミスを犯してしまいました。このようなことがないよう、かなり前もってスケジュール確認をしておきましょう。
- 私の最大の失敗は、博士論文執筆および発表準備にかける時間を最小化しようとしたことです。当時の私は、ほとんど誰も読まない博士論文に時間をかけるくらいなら、次の研究や学術論文執筆に時間を使いたいと考えていました。結果的に予備審査会および特例措置審査会には非常に質の低い博士論文(発表した学術論文を適当に繋げただけ)を提出し、審査委員の先生方からは厳しい評価を受けました。これから審査会に臨まれる皆さんはこれを反面教師にしていただければと思います。
スケジュール
私の場合、修了に向けた主な流れは以下でした。下線は早期修了特有のプロセスです。
- 中間報告会:発表30分、質疑30分
- 博士論文簡易製法版を審査委員会の先生方へ送付
- 特例措置審査会を開催することの妥当性を主張するための書類を提出
- 特例措置審査委員会の先生方への個別説明:各60分弱
- 予備審査委員会の先生方への個別説明:各60分弱
- 特例措置審査会:発表60分、質疑60分
- 予備審査会:発表60分、質疑60分
- 特例措置審査会および予備審査会でのコメントを受けて博士論文修正
- 博士論文やその他資料を教務チームへ提出
- 博士論文簡易製本版を本審査委員会の先生方へ送付
- 本審査委員会の先生方への個別説明:各60分弱
- 早期修了の正式な許可の通知
- 本審査会:発表60分、質疑60分
- 本審査会でのコメントを受けて博士論文修正
- 修正した博士論文を主査および副査の先生方へ提出
- 全ての主査および副査の先生が修正版を承諾
- 本製本版およびその他書類を教務へ提出
- 学位授与式